
弁護士 芳林 貴裕
奈良弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 芳林 貴裕
奈良県出身。東大寺学園高校卒。京都大学法学部、同法科大学院を修了し、栃木県内の法律事務所にて企業法務案件等に携わった後、地元・奈良に戻る。事業承継や事業再生、廃業支援などの実務に幅広く従事している。
奈良で事業承継を考えている経営者の皆さん、事業の引継ぎは、これまで築き上げてきたものを未来へ繋ぐ大切なプロセスです。その成功には、多角的な視点からの準備と専門家のサポートが不可欠です。特に、法的な側面から事業承継を円滑に進めるためには、弁護士への相談が非常に有効です。
「まだ漠然としか考えていない」「何から手をつけていいか分からない」といった段階の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、早期に弁護士に相談することで、予期せぬトラブルを回避し、事業承継を成功へと導くことができます。
ここでは、事業承継を検討する際に弁護士へ相談すべき3つの理由を、弁護士の立場から詳しくご説明します。
紛争の未然防止と円滑な承継の実現
事業承継は、単に経営者が交代するだけでなく、株式や事業用資産の移転、従業員の雇用継続、取引先との関係維持など、多岐にわたる要素が絡み合います。親族内承継、従業員承継、M&Aなど、どのような形態であっても、当事者間の利害が複雑に絡み合い、意見の対立が生じるリスクをはらんでいます。
例えば、親族内承継の場合、複数の相続人がいる場合の後継者選定や、株式の評価・分配を巡って争いが生じることがあります。また、M&Aの場合、売却価格や従業員の処遇、競業避止義務など、細かな条件で交渉が難航することも珍しくありません。
弁護士は、これらの潜在的な紛争リスクを事前に洗い出し、法的な観点から最適な解決策を提案します。事業承継計画の策定段階から弁護士が関与することで、各当事者の意向を調整し、法的に有効かつ公平な合意形成をサポートします。これにより、将来的な紛争を未然に防ぎ、円滑な事業承継を実現することが可能になります。
契約書作成・レビューによるリスク回避
事業承継においては、多くの契約書が関わってきます。株式譲渡契約書、事業譲渡契約書、M&A基本合意書、株主間契約書、雇用契約書、不動産売買契約書など、どのような手段を選択するかによって変わりますが、その種類は多岐にわたります。これらの契約書の内容は、事業承継の成否を左右するだけでなく、将来の経営等に大きな影響を与える可能性があります。
例えば、株式譲渡契約書に不備があれば、後日、譲渡価格や契約不適合責任を巡ってトラブルになる可能性があります。また、事業譲渡契約書で引き継ぐ債務の範囲が不明確であれば、予期せぬ債務が承継されてしまうリスクも考えられます。
弁護士は、これらの重要な契約書の作成を支援し、あるいは既存の契約書をレビューします。法的な専門知識に基づき、依頼者の利益を最大限に守る条項を盛り込み、不利な条項やリスクとなりうる条項を排除または修正します。これにより、法的なリスクを最小限に抑え、安心して事業承継を進めることができます。
紛争が発生した場合の代理交渉・訴訟対応
どれだけ準備を重ねても、事業承継の過程で予期せぬ紛争が発生してしまう可能性はゼロではありません。例えば、後継者と他の親族との間で遺産分割を巡る争いが生じたり、M&A後に契約違反が発覚し、損害賠償請求に発展したりすることもあり得ます。
そのような場合、感情的な対立が深まり、当事者だけでは解決が困難になることがあります。事業承継の紛争は、会社の存続にも関わる重大な問題に発展しかねません。
弁護士は、万が一紛争が発生した場合でも、依頼者の代理人として冷静かつ専門的な立場から交渉に臨みます。法的な根拠に基づき、依頼者の主張を明確に伝え、相手方との合意形成を目指します。交渉で解決できない場合は、調停や訴訟といった法的手続きを通じて、依頼者の権利と利益を最大限に守るために尽力します。
最後に
奈良で事業承継を検討されている皆様、事業の引継ぎは人生における大きな転機であり、多くの課題を伴います。しかし、弁護士という法的な専門家を早期に活用することで、これらの課題を一つずつクリアし、成功へと導く道筋が見えてきます。
事業承継は、未来の経営を左右する重要な決断です。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。あなたの事業が、これからも奈良の地で発展し続けるよう、全力でサポートさせていただきます。